NASの転送速度測定で遅い原因と判断方法、改善策を解説
NASの転送速度測定で期待した速度が出ない場合、光回線の速度だけでなく、Wi-Fi、ルーター、LANケーブル、NASのディスク性能、ファイル構成などを分けて確認する必要があります。測定条件をそろえ、経路ごとの実効速度を比較することで原因を特定しやすくなります。
NASの転送速度測定で確認できる現象
NASへファイルをコピーすると、表示される速度が数MB/sまで落ちたり、開始直後だけ速くて途中から遅くなったりすることがあります。インターネットの速度測定で下りや上りが十分に速くても、NASへの転送速度が同じ水準になるとは限りません。
NASの転送速度は、端末からNASまでのネットワーク経路、使用するプロトコル、ファイルのサイズと数、NASのCPUやストレージ性能によって変わります。まずは単一の大容量ファイルと大量の小容量ファイルで結果を分けて記録すると、問題の傾向を把握できます。
原因1:Wi-Fi接続がボトルネックになっている
ノートパソコンやスマートフォンからWi-Fi経由でNASへ接続している場合、電波状況や周囲の利用状況が転送速度に影響します。2.4GHz帯は電波が届きやすい一方、混雑しやすく、5GHz帯でも壁や距離によって速度が低下します。
Wi-Fiのリンク速度は、実際のファイル転送速度より高く表示されることがあります。これは通信の制御情報や電波干渉の影響があるためです。NASの速度を正確に確認する際は、同じ端末をLANケーブルでルーターへ接続し、Wi-Fi測定の結果と比較してください。
原因2:LANポートやケーブルが低速規格になっている
NAS、ルーター、パソコンのいずれかが100Mbps対応の場合、ギガビット対応の機器を使っていても経路全体の上限は低くなります。リンク速度が100Mbpsなら、実際のファイル転送はおおむね10MB/s前後になることがあります。
LANケーブルの規格不一致やコネクターの接触不良も確認が必要です。機器の管理画面やOSのネットワーク情報で、NASにつながるポートが1Gbpsや2.5Gbpsでリンクしているか確認します。交換可能であれば、対応するLANケーブルに取り替えて再測定してください。
原因3:ルーターやスイッチングハブの処理能力が不足している
ルーターやスイッチングハブを経由する構成では、機器のポート速度だけでなく、同時通信への対応力も転送速度に影響します。複数の端末が動画視聴やバックアップを行っていると、NASへの帯域が分散されます。
古いルーターでは、設定処理や無線通信の負荷によって有線側の実効速度が下がる場合があります。NASと測定端末を同じスイッチに接続し、ほかの通信を止めた状態で確認すると、ルーターや家庭内ネットワークが原因かどうかを切り分けられます。
原因4:NASのストレージ性能やRAID処理が制限している
NASのHDDは、読み書きの位置や同時アクセスの状況によって性能が変わります。RAID構成ではデータ保護やパリティ計算のためにCPU負荷が発生し、書き込み速度が単一ディスクより低くなることがあります。
ストレージの空き容量が少ない場合や、バックグラウンドで再構築、インデックス作成、ウイルススキャン、同期処理が動いている場合も速度が低下します。NASの管理画面でCPU使用率、メモリー使用量、ディスク使用率、RAIDの状態を確認し、処理が落ち着いた時間帯に再測定してください。
原因5:小さなファイルを大量に転送している
写真や文書などの小さなファイルを大量に転送すると、データそのものの速度よりも、ファイルごとの確認処理やメタデータ更新が支配的になります。そのため、大容量ファイルでは速いのに、フォルダー単位のコピーでは遅いという現象が起きます。
同じ容量でもファイル数が多いほど、SMBなどのファイル共有プロトコルが行う処理回数は増えます。測定では、数GB程度の単一ファイルと、同容量の小ファイル群を別々に転送し、結果を比較します。小ファイルの処理が課題なら、圧縮やアーカイブでまとめてから転送する方法が有効です。
原因6:SMB設定や暗号化が転送速度に影響している
WindowsやmacOSからNASへ接続する場合、一般的にはSMBが使われます。SMBのバージョン、署名、暗号化、ユーザー認証の設定によっては、NASや端末のCPU負荷が高まり、速度が下がることがあります。
NAS側でSMBの暗号化や署名を有効にしている場合は、セキュリティ上の効果と性能のバランスを確認してください。ただし、外部公開や不特定のネットワークからのアクセスでは、速度だけを理由に安全対策を無効化しないことが重要です。設定変更前後で同じファイルを使って比較測定します。
NASの転送速度を正しく測定する方法
- 測定端末とNASを同じLAN内に接続し、まず有線接続で確認します。
- バックアップ、動画再生、クラウド同期など、ほかの通信を一時的に止めます。
- 大容量の単一ファイルと、小ファイルをまとめたフォルダーを用意します。
- 読み出しと書き込みを分け、下り方向と上り方向の結果を記録します。
- 同じ条件で2回から3回測定し、瞬間的なピーク値ではなく継続時の速度を比較します。
速度の単位にも注意してください。ネットワークサービスの速度はMbps、ファイルコピー画面はMB/sで表示されることが多く、1バイトは8ビットです。たとえば1Gbpsのリンクでも、プロトコルのオーバーヘッドやストレージ性能を考慮すると、実効速度は理論値より低くなります。
測定結果からボトルネックを判断する方法
- 有線でも遅い場合:NASのストレージ、CPU、SMB設定、LANポートを確認します。
- 有線は速くWi-Fiだけ遅い場合:電波強度、周波数帯、距離、干渉を確認します。
- 単一ファイルは速く小ファイルだけ遅い場合:ファイル数やメタデータ処理が原因の可能性があります。
- 読み出しは速く書き込みだけ遅い場合:HDD、RAID、キャッシュ、NASの書き込み処理を確認します。
- 時間帯によって変動する場合:家庭内の同時通信やWi-Fiの混雑を確認します。
NASの転送速度を改善するための対策
まず、測定端末とNASをギガビット以上の有線LANで接続し、機器のリンク速度を確認します。Wi-Fiを使う場合は、端末とルーターを近づけ、混雑の少ない周波数帯を選びます。ルーターやスイッチングハブのファームウェア更新も、安定性の改善に役立つことがあります。
NAS側では、不要なバックグラウンド処理を時間帯で分散し、ストレージの空き容量と健康状態を維持します。小ファイルの大量転送にはアーカイブを使い、定期バックアップでは差分転送に対応したソフトウェアを検討してください。
インターネット経由でNASへアクセスする場合は、光回線の下りや上りだけでなく、プロバイダー、ルーターの設定、外部側の通信環境も関係します。外部公開では速度よりも認証、暗号化、アクセス制御を優先し、安全な接続方式を使用してください。
まとめ
NASの転送速度測定では、インターネットの速度測定結果だけで原因を判断できません。有線とWi-Fi、読み出しと書き込み、大容量ファイルと小ファイルを分けて測定し、ネットワークとNAS本体のどちらに制限があるかを切り分けることが重要です。測定条件をそろえて比較すれば、必要な機器交換や設定変更を絞り込めます。
通信品質を確認する場合は、インターネット速度測定で下り、上り、Ping、遅延を確認し、家庭内LANの測定結果と分けて記録してください。
